[ 科研費基盤研究(A)海外 FY2015-2017]

光と栄養塩の供給バランスは生物群集や生態系過程にどのような影響を及ぼすのだろうか?

調査池での実験風景

生物群集の基盤となる基礎生産者が生産する有機物の組成や元素比は、同じ種でも、光や栄養塩の供給量比によって大きく変化するが、動物では餌の化学量組成により体構成元素比が大きく変化することはない。このため、光と栄養塩の供給比が変化すると生産者と消費者間に元素比のミスマッチが生じる。このようなミスマッチングは化学量効果と呼ばれ、高次栄養段階への生態転換効率や群集栄養動態を変化させると考えられている。しかし、これまの知見は比較的短い時間スケールで抽出して行ったものであり、光—栄養塩バランスによる化学量効果の影響が、生食連鎖と腐食連鎖間で異なるかなど、群集全体への影響は良く解っていない。光—栄養塩バランスの変化影響とその群集応答を理解するためには、生息場所全体の群集を対象に、種プールや物質循環を含めた空間・時間スケールでの実験が不可欠である。

そこで本研究では池沼生物群集全体の光—栄養塩バランスを操作するため、コーネル大学(ニューヨーク州)の実験池施設(CUEPF)を利用した遮光フローティングシートによる光操作実験や、モンタナ州 Lost Lakeでエンクロージャを利用した野外実験を実施した。

モンタナ州 Lost Lakeでのエンクロージャー実験