大学院生のImane Sioudさんが、牧野渡さんと共同で行っていた日本の湖沼に産するケンミジンコ(いわゆるCyclops vicinus s. l. )の分類及び系統学的再検討に関する論文が出版されました。各地で採集したC. vicimusと思われる標本について、形態を詳細に調べたうえでmtDNAの塩基配列を比較したところ、形態的にも遺伝的にもC. vicinusC. kikuchiに分かれること、それらは欧州からユーラシアにかけて広く分布する種であることが示唆されました。しかし、C. vincinusは欧州産と同じ系統に含まれるものの、C. kikuchiiは日本と欧州産とでは系統的に分化しており、種により遺伝的分化の程度が異なっていることがわかりました。C. kikuchiは Simrnov博士により記載され、日本で最初に動物プランクトンの鉛直移動を木崎湖で観測した菊池健三博士に献名された種類です。これまでの研究では、C. vicinusC. kikuchiはしばしば日本でも誤同定されてきましたが、本研究により分類学的な整理を行うことが出来ました。

Differential intraspecific genetic variations of the closely related, wide-ranged freshwater copepods Cyclops vicinus Uljanin, 1875 and C. kikuchii Smirnov, 1932. Limnology, https://link.springer.com/article/10.1007/s10201-020-00647-7

日本湖沼に産するCyclops vicinusC. kikuchiiの形態的差異:体長(Body length)や尾肢長(Furca)と尾肢刺長(Ti)との関係。
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