課題講演

(1) 課題講演の内容

  各課題での申込みは下記の(2)をご覧下さい。

A『流域ガバナンス:陸水学が果たす学術的貢献と社会的役割』

コンビーナ:奥田昇(総合地球環境学研究所)
E-mail: nokuda@chikyu.ac.jp,電話:075-707- 2286

陸水学は、陸水域の物理・化学・生物プロセスを総合的に理解する学際科学として19世紀に誕生しました。さらに、近代化の中で人間活動が陸水環境に及ぼす影響が無視できないほど増大するにつれ、応用陸水学が発展してきました。近年では、研究者や行政が中心となって、陸水環境を統合的に管理する「流域管理」が実践されるようになりました。しかし、流域社会における環境問題が複雑・重層化するにつれて、行政や研究者だけで問題を解決するのが困難になってきました。流域ガバナンスとは、流域で顕在化する社会的課題や環境問題を解決するために社会の多様な主体が問題と向き合い、協働する仕組みです。
本課題講演は、流域ガバナンスに携わる研究者の実践事例や体験談を持ち寄り、流域ガバナンスに対する理解を深め、情報共有する場を醸成することを目的とします。流域ガバナンスにおける陸水学の学術的貢献や社会的役割について闊達な議論を期待します。生物多様性・環境保全などの活動に取り組んでいる会員はもとより、これらの活動を社会と協働して実践することを計画している会員からの講演を広く募集します。

B『陸水を介した森・川・海のつながり』

コンビーナ:大西健夫(岐阜大学)・岩田智也(山梨大学)
問い合わせ先 takeon@gifu-u.ac.jp

陸域における人間活動は陸水を介して上流域から下流域に影響が波及するため、流域的視点が必要不可欠である。流域の「統合的水資源管理」や「森里海連関学」、「LOICZ (Landand Ocean Interaction at Coastal Zone)」など、陸域と海洋の一体的な水系管理の重要性は従来から認識はされていたものの、未だ概念論にとどまっており、政策決定の場でも広く利用可能な形に実体化していくためには、流域の変化を包括的に評価すること、そして、その変化が沿岸域と海洋へ及ぼす影響を科学的に評価する必要がある。しかし、従来の研究では個別プロセスの研究が主体であったため、流域全体をひとつのシステムとして捉える方法論、視点、課題自体が明確にされていない。そこで本課題講演では、上流域から森林、農地、都市、湖沼、湿地、沿岸域と多様な土地利用・土地被覆を経由しながら、河川や湖沼を形成し、海洋へ到達する陸水のプロセスを包括的に取り扱うための手法、概念、課題を明らかにすることを意図して数年にわたるシリーズとして企画するものである。今年度は広く課題を明らかにすることを目的として、「森・川・海のつながりと人間活動」との関係に着目した研究であれば、いかなる課題も歓迎である。課題の抽出を行うことに主眼をおいた課題講演としたい。

C『火山と陸水』

コンビーナ:野崎健太郎(椙山女学園大学教育学部)・田代喬(名古屋大学減災連携研究センター)
問い合わせ先 ken@sugiyama-u.ac.jp

火山は、その活動によって、カルデラ湖、強酸性環境、温泉など、陸水学にとって魅力的な研究対象を私たちに提供してくれます。例えば、火山性酸性湖の美しくも不思議な水色の形成過程(Ohsawa et al. 2010: Limnology, 11:207-215)、特異な生物相と物質代謝(Doi et al. 2003: Aquatic MicrobialEcology, 33: 87-94)、今日でも興味深い現象が報告され続けています。一方で火山の噴火は大きな自然災害を引き起こし、御嶽山(長野県・岐阜県)の2014年噴火では、58名が犠牲者になり、火山噴出物が王滝川水系の濁りと酸性化を引き起こしたことは記憶に新しいところです(日本陸水学会東海支部会)。本課題講演は、陸水学会第82回大会が、日本有数の火山地帯である東北地方、しかも火山性酸性河川の人為的な流入によって環境が改変された田沢湖近隣で開催されることから、火山と陸水との関係に改めて着目し、基礎科学に留まらず、防災を含んだ応用科学に至る、幅広い範囲で議論することを目的に企画しました。

D『陸水環境における放射性物質の挙動 −原発事故後6年間を振り返って−』

コンビーナ:野原精一(国立環境研究所)、植田真司(環境科学技術研究所)
問い合わせ先 snohara@nies.go.jp

2011年3月に東京電力福島第一原子力発電所事故から放出された放射性物質は世界的規模の環境汚染を引き起こした。特に東北・関東地方には特に多く沈着し、降雨などのイベントに伴い徐々に流域内を降下している。河川水を通じた放射性セシウムの移動は、水田などの水を用いた農作物への影響、山林などからの放射性セシウムの拡散状況の把握、河川底質や河口付近への放射性セシウムの移動などの環境動態評価が重要となる。また、水中の放射性Cs は主に溶存態と懸濁態で存在し、その異なる挙動が予想される。そこで、陸水環境での懸濁粒子の挙動、沈殿量の季節変化、流量観測と放射性物質の挙動、河口域に洪水時に流れ込んだ放射性物質の分布と蓄積量、水生生物相と放射性物質の蓄積量を定量的に明らかにすることが陸水学者に求められている。第79回つくば大会の課題講演に引き続き、原発事故後6年間を振り返って各地の陸水における環境放射能研究を総合的に考察し、今後地元東北の環境改善に還元して行く方法について議論する。

E 『Internationalizing Limnology II』

Convener: Indranil Mukherjee
mail: indranil@ecology.kyoto-u.ac.jp

After a successful English session in JSL 2016 (Internationalizing Limnology), we decided to continue the session to provide a platform to bring together and interact with various researchers from Japan and various countries of the world. All the researchers working in any field of limnology who wish to present in English and those who are not confident in presenting their work in Japanese are welcome to present in this session. We hope that this opportunity will help in exchanging novel ideas from the researchers working in various aspects of limnology and this will also help in initiating international collaborations.

(2) 課題講演の申込

  1. 課題講演での講演を希望される方は、6 月26 日(月)〜 7 月25 日(水)の期間中に、直接コンビーナに連絡を取ってお申し込み下さい。
  2. コンビーナより課題講演に採択された講演者は、ご自身で大会参加申込を行って下さい。
  3. 課題講演に採択された講演者は、書式1をダウンロードし、必要事項を記入の上、コンビーナにメール添付にて送付して下さい。

書式1 ダウンロードボタン

(3) コンビーナによる講演とりまとめ

  1. コンビーナは、課題講演の講演者より送付された書式1を発表順にとりまとめ、7月28日(金)までに大会企画受付(tazawarikusui@gmail.com)にメール添付にて送付して下さい。