J. Urabe Lab 出来事
津波影響と生態系への取り組み
2014年9月22日月曜日
少し前のことになりますが、5月22日に「2014年度経団連自然保護協議会会員総会記念講演会・シンポジウム、NGO等との交流会」で、環境省生物多様性センターの中山隆治所長とともに話をして来ました。その抄録が「経団連自然保護協議会だよりNo. 67」に収録されています。入手しにくいので、関連する部分だけ許可を得てアップロードしました。興味のある方はご覧下さい。
この講演に関連した向井康夫さんを主筆とする被災水田に関する研究論文がLimnologyに受理掲載されました。アースオウッチジャパンと共同で市民調査員とともに行った研究です。津波に冠水した水田生物の回復は目覚ましく、復興した水田ではおよそ3年でほぼ元の生物群集に回復しました。面白いのは、飛んで移動する水生昆虫は復興するとすぐに定着し、歩いて移動するカエルや水を経由して移動する貝類などの定着は遅れることが解りました。意外だったのは、貝類などの捕食者であるヒルが定着するとほぼ群集が回復したと言えることです。ヒルは、水田生物群集の健全性の指標と言えるかもしれません。
•Mukai, Y., T. Suzuki, W. Makino, T. Iwabuchi, M. So and J. Urabe. (2014) Ecological impacts of the 2011 Tohoku Earthquake Tsunami on aquatic animals in rice paddies. Limnology, 15: 201-211.
干潟の津波影響についても、随分前ですが論文にしています。その研究では、津波の干潟生物群集の影響は、大きな津波が押し寄せた干潟ほど大きく、また生物としては泥の中に埋在して生活する二枚貝やゴカイへの影響が大きいことが解りました。面白いことに、ここでは移動性のあるカニや巻貝など干潟表面を徘徊するベントスへの影響は小さいことがわかりました。
こちらも、興味のある方はご一読ください。
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