[ 科研費基盤研究(A) FY2016-2018] 他

遺伝的多様性と集団の維持機構にはどのような関係があるのだろうか?

種内競争は短期的時間スケールでは個体群に有利に作用するが、遺伝的多様性の減少により長期的には環境変化に対して不利に作用すると推定されている。しかし、実際には種個体群の遺伝的多様性と種内競争との関係はよく分かっていない。

ミジンコ類(Daphnia 属)など、動物プランクトンの多くは藻類(植物プランクトン)を共通資源としているため、捕食者の在不在にかかわらず餌をめぐる競争が個体群動態や群集構造に強く影響することが示されてきた。一般に、種間に比べ同種個体間のほうが資源や捕食者の重複度が大きいため、種間競争よりも種内競争のほうが強い。したがって、ミジンコ類は自然界において特に強い種内競争の元で個体群を維持していると考えられ、個体群の遺伝構造やニッチ分化などに果たす種内競争の役割を調べるうえで格好の生物である。私たちの研究から、日本のDaphnia pulex(和名ミジンコ)はすべて有性生殖せずに休眠卵を産む絶対単為生殖型(図1)で、北米から独立に侵入した4クローン系統(核遺伝子型)を起源としていることが判っている。また、これらクローン系統の中には日本に侵入後に分子進化を生じたものもいる。これらクローンは絶対単為生殖で交雑しないため、独立した個体群(隠蔽個体群)である。同種であればニッチ重複度が他種間に比べて大きく、競争は強く作用するはずである。しかし、その予見に反して複数クローン同所的に個体群を形成し生息している池沼は稀ではない。なぜ、そのようなことが生じているのだろうか?

この謎を、個体群生態、生理生態、進化遺伝の観点から明らかにすることが本研究の目的である。