日本列島には、広義のミジンコも含めて、およそ100種の生息が記録されています。遺伝解析が進めば、もっと多くの種の生息が確認されるかも知れません。日本に生息している本当のミジンコ類(Daphnia 属)の中には、北米からの帰化種であるたミジンコ(Daphna pulex)だけでなく、欧州や北米に比べ、系統的に分技年代の古い個体を含む種(カブトミジンコ Daphnia galeata )や、遺伝的に多様な種(ハリナガミジンコ Daphnia rosea s.l. : D. dentifera )、東アジアのみに生息しているユニークな種(タナカミジンコ Daphnia tanakaiやミツクリミジンコ Daphnia mitsukuri) などがいます。日本列島は海に囲まれているため、最終氷河期は氷に覆われなかったと考えられています。それは、湖沼など淡水生態系が残っていたことを意味しており、北米や欧州の温帯地域と異なって、多くの淡水生物は氷河の発達による絶滅を免れた可能性があります。分技年代の古いミジンコ種は日本列島を含む極東域で進化、種分化したのかも知れません。この可能性を調べるため、国内はもとより、中国の研究者をはじめとして国際的な共同研究を進めています。