ここしばらく、論文掲載料(Article Publishing Charge)にそこそこ出費していることに気づきました。そこで、APCとインパクトファクター(IF)との関係を調べてみました。根深い問題のようにも思えるし、せっかくなので、メモ書きで残しておきます。

調べてみたのは、一般雑誌の他、生態学・進化学関係という(自分が対象としている)かなり限られた分野の雑誌ですが、それでも見事な正の相関を発見(下図)。現在の学術雑誌は、だれでもアクセスして読めるOpen Access Journal(OAJ)と学会等に所属し会費を支払うことで購読出来る雑誌に二分されますが、後者も著者が別途APCを支払うことでだれでもアクセスして読めるOAオプションがあります。こういうオプションが用意されている雑誌はHybrid Open-access Journal(HOJ)と称されています(Springerは将来OAJにすることを視野にTransformative Journalと呼んでいるようです)。図をみると、やはりIFの高い雑誌ほどAPCは高い! ちなみに、この図のAPCは1 USD=145円で換算。APCとIFの関係をみると、OAJでもHOJでも関係は同じで、Y切片からみると、IFに関係なく論文をOAにするなら23万の基本料金が必要。あと、はIF=1あたり3.3万円の加算。IF=5のOAに論文を投稿するなら、40万円くらいが相場か。他の分野では、この傾きはどうなんだろうか、ちょっと気になる。医学系だと、IF=1あたりの価格はもっと高いかも。

図1 生態学関連の雑誌を中心とした論文掲載料(千円)とインパクトファクターとの関係
点線と□はオープンアクセスジャーナル、実線と■はハイブリッドジャーナル

Nature のOAでのAPCは145万円….基盤研究Cでは支払い無理ですね、コレ。オンラインジャーナルのパイオニアPlosOneはIFあたりで見れば結構良心的だったんだなあ。Royal SocietyのAPCはさすがと感心。学会系の雑誌は安いかなと思っていたら、大手雑誌社から出版されているのでOAのAPCは割高感がある。東北大は某大手雑誌社とOAにかかるAPCを半額にする契約をしたとか。使ってみたけど、円安なのでそれなりの出費になった。ここしばらくの円安は痛いなあ。

図2 図1の赤枠の拡大
点線と□はオープンアクセスジャーナル、実線と■はハイブリッドジャーナル

IFの高い雑誌に投稿したり、引用回数が高くなるOAにしようかと思うのももっとも。で、論文投稿先のAPCが高くてもまあいいかと。これって、完全に研究者の足元(習性)見られてる。APCの安い雑誌に良い研究を投稿すれば、IFが上がるでしょう。せめて、IFが同じならAPCの安い雑誌に投稿しようかと心が動く。でも、この図は、APCの安い雑誌に良い研究論文が掲載されるようになると、その雑誌のAPCが上げていくことを示唆している。美味しそうな商売だから、この構図は大手だろうと振興の出版社だろうと変わらなのかな。アチコチで指摘されてるように、だれでも論文にアクセス出来るOA化は望ましいけど、研究費がないと論文が出せなくなるのは研究者にとってかなり深刻な問題ではなかろうか。この問題を打破する新しい動きがそのうち出てくるかも。