米国コーネル大学との共同研究成果をプレスリーリースしました。

湖底の水草と水中の植物プランクトンの予想外な関係が判明

米国コーネル大学実験施設での操作実験風景:遮光シートを浮かべて池の光投入量を制御している。

【ポイント】

  1. 植物の成長は光に依存しているため、光量が減ると植物プランクトン量も減ると予想されていたが、予想に反し、光量減少はむしろ植物プランクトンを増やし水質を悪化させることが判った。これは、浅い湖沼で光が減ると、競争者である水草が減少して栄養が使われなくなり、植物プランクトンの成長が増加するためである。
  2. 光環境の変化に対する生態系の反応については、学術的知見が乏しいが、本研究は、光環境の変化が生物間相互作用を介して湖沼生態系に大きな影響を与えることを、野外実験により初めて実証した。
  3. 本研究成果は、光の変化に対して生態系がどのように反応するか、という生態学の大きな問題を解く手がかりを発見したものであり、太陽光を遮って有害な藻類を減少させたり、水上太陽光発電を行ったりする際には、生物間相互作用への影響を十分に考慮せねばならないことを示している。

【概要】

太陽光は、光合成を通して生態系を維持しています。しかし現在、さまざまな人間活動が湖沼生態系に降り注ぐ光の量を変化させています。これまでの湖沼研究では富栄養化(注1)が注目されることが多く、光量が湖の生態系に与える影響はあまり調べられていませんでした。

東京大学総合文化研究科の山道真人講師と、東北大学生命科学研究科の占部城太郎教授らの研究グループは、光が弱まると水草が減少し植物プランクトンが増加して、水質や生態系に大きな影響を及ぼすことを発見しました。この研究は、野外の実験池における遮光実験と、数理モデルを組み合わせて実施されました。

今回の研究成果は、光の変化に対して生態系がどのように反応するか、という生態学の大きな問題を解く手がかりを発見したものであり、国内外の環境政策に影響する学術的知見として利用されることが期待されます。また、社会の身近な問題である有害な藻類の大発生や水上太陽光発電の現場において、生物間相互作用の考慮を一層強く求めることにもつながることが期待されます。

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本学でのプレスリーリース

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発表した論文

雑誌名:「英国王立協会紀要(Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences)」(オンライン版:2018 年 7 月 4 日) 論文タイトル:A shady phytoplankton paradox: when phytoplankton increases under low light 著者:Masato Yamamichi*, Takehiro Kazama, Kotaro Tokita, Izumi Katano, Hideyuki Doi, Takehito Yoshida, Nelson G. Hairston Jr. and Jotaro Urabe
DOI 番号:10.1098/rspb.2018.1067
アブストラクト URL:http://dx.doi.org/10.1098/rspb.2018.1067

カテゴリー: 研究